不思議な夢のお話 Episode1
登場人物紹介
型枠 大和(かたわく やまと)
型枠大工の新人。まだ実際に作ったことはないが、勉強の成果か、知識は豊富。
とび職のスペシャリスト。大和が夢で出会った人物の一人。
鉄筋工のスペシャリスト。大和が夢で出会った人物の一人。
電気工のスペシャリスト。大和が夢で出会った人物の一人。
**********************************************************
高校を卒業して、程なくして「立派な型枠大工になる」なんて息巻いて東京に出てきたけど。
あれから随分経つのに、毎日加工場の釘抜きだし、そんなんじゃ仕事を覚えられるわけないし。
想像していた自分と違いすぎて、折れそうだ。
もっと必要とされたい。自分を必要としてくれる現場があるなら。
最近は、ほぼ毎晩ベッドに横になりながらそんなことを考えるようになっていた。
毎日悶々としながら、気付けば朝になっている。その繰り返し。
今日も、そうだと思っていた。
そよそよと風が頬を撫でていく。
暖かい、日差しの匂いがした。
「ん…、朝…あれ」
両手に伝わる草の感触、頭上には木。
自分の家で寝ていたはずなのに、そこにはベッドはおろか、室内ですらなかった。
「え、俺の家は!?」
勢い良く起き上がると、如何にも不良そうな、前髪をちょんまげにした男が目に入った。
「お、起きたか。お前、俺達の仕事手伝えよ。」
「は…仕事?」
状況に付いていけず、唖然としていると、男は答えを聞くよりも先に腕を掴み、そのまま歩き出してしまった。
改めて景色を見てみると、家はぽつぽつと建っているが、作りがどこか変だった。
そうこうしている内に、目的の場所に到着したらしく、腕を放された。
多分、見るからに建築の現場だろう。
「おーい、仲間連れてきたぞ」
そう言って、ちょんまげ男が手を振る先には、ガラの悪そうな短髪男と、如何にもやる気の無さそうな、ロン毛の金髪の男。
二人は俺に気付くと、短髪の男が歩み寄ってきた。
そして開口一番「お前、何の仕事できる?」と。
「お、俺は、型枠大工やってます。」
一瞬、周りが固まった。というよりも、何を言っているのか分からない。と言う感じだった。
「か、型枠です。建物の土台として作るでしょう。」
「そんなもん、聞いたことねぇよ」
「そんなまさか。じゃあ、建物はどうやって…」
ここに来るまでいくつか建物があったのを思い出し、短髪男に投げかける。
男は、理解できないとでも言うように、「それがなくても家は建つだろ」と言った。
型枠がないなんて信じられない。
この世界の建物は、土台をなくして建っているのか。
この人達に、型枠のことを教えなければ。わけの分からない世界で、俺はそう決意した。
2話に続く…