型枠大工の道具について Episode3
赤=大和のセリフ
ピンク=ラフィネスのセリフ
「さて、次はついに型枠を解体する時に必要な道具を紹介するよ!」
「楽しみです!」
「前回に引き続き、バール、ハンマー、フォームタイ廻し、カッター、クランク廻しを使うんだけど、それに加えて使うものがまた増えるよ」
「これはラチェット。ホームタイのナット、クランプのナットを締めるのに使うよ。とがった部分で番線を絞ることもできるんだ。」
「ほえ~、変わった形ですね。」
「確かに日常ではあまり馴染みがない形だね。」
そしてある道具を見つけると、迷わずその道具を手に取っていました。
「これは結構使うもの!スピレン!」
「スピレン…」
「スピードレンチ!中にはね、電動工具で取れないPコンがあるんだ。それを取るために使うんだよ」
「Pコンって何ですか?」
私の問いかけに、男の人は「あぁ、そうだった!」と言うと、Pコンについて説明してくれました。
「プラスチックコーンの略だよ。セパレーターに間隔保持のために、止める部分が出てくるんだけど、それをカップやコーンって言うんだ」
「本当にたくさん知っているのですね!」
「そして、木コン取器。木コンっていうのは、型枠を押さえる部材で、型枠に詰めるコンクリートが破裂しないように、両側の型枠を中で繋ぐ金物の両端に付くプラスチックの部品だよ。木コン取器で木コンを外すと、木コンの穴が残っちゃうからモルタルって言うのを埋めて仕上げるんだ」
私が相変わらず感心していると、男の人は「こんな感じかな」といってニコリと笑いました。
「何となくわかった?」
「分かりました!凄いです!」
男の人は少し照れくさそうでした。
「じゃあ、これ買ってもいいかな?」
「はい!では、レジのほうへ」
レジで商品を精算すると、やっぱり結構な値段がしていました。
「今回はお値引きしますよ」
「え!そんな大丈夫だよ」
とは言え、道具のことを色々と説明してくれたのに満額取るのも気が引けます。
「大丈夫です!おじちゃんには私からちゃんと説明しておきますよ」
「おじちゃん…?うーん、そこまで言ってくれるならお言葉に甘えようかな」
「はい!」
男の人の会計をしていると、ちょうどおじちゃんが帰ってきました。
「おや?お客さん?」
「あ、おじちゃんお帰りなさい!」
私がそう言うと男の人はおじちゃんに会釈をしていました。
「すみません、ちょっと安くしてもらっちゃいました」
「色々道具の知識を教えてもらったので…ダメですか…?」
ラフィネス必殺瞳ウルウル攻撃!これでダメだったことはありません!
「それなら仕方ないね、ラフィネスちゃんがお世話になりました」
おじちゃんがそう言ったのを聞いて、男の人は「そんなことないです!」と言いました。
お会計を終えて、男の人をお店の出口まで送ったところでハッとしました。
名前を聞いていないです!
「あの、お名前は?」
「あぁ、ごめん。俺、型枠 大和って言うんだ」
「大和さん…」
「また、道具買いにきますか?」
「うん、買いに来るよ」
その言葉を聞いて、とても嬉しい気持ちになりました。
「じゃあ、また」
「はい!お待ちしています!」
そう言って手を振って去っていく大和さんを、私は何だか幸せな気持ちで見送っていました。
FIN