不思議な夢のお話 Episode4
「よっしゃ!作るぞー!」
「「おぉーー!」」
鉄骨君の提案に他の二人も乗り気だ。鉄骨造の建物を実際に自分が作れることは嬉しいのだが、大事なことを三人に言い忘れていた。
「あ、あのさ…三人とも…」
「ん?なんだ?」
「大事なことを言い忘れていたんだけど…、型枠って言うのはチームワーク作業だから、俺一人じゃ無理なんだ。」
あぁ、きっと「そんな大事なこと何でもっと早く言わないんだ」って怒られるんだろうなぁ…。
そんな俺の心配は、いきなり組まれた肩によって消えた。
「なにもお前一人で型枠作れなんて言ってねぇだろ」
「四人で作ろうぜ」
「みんなで力を合わせてね…」
すごい…。たった数時間しか一緒にいないのにこの仲間意識。俺は感動した。
「みんな…!そうだね。四人でも人数不足だけど、頑張ってみよう!」
「まぁ、そこらへんは一応物語だから、登場人物増やしすぎると空気になる奴が出てくるっていう問題があるからな。」
「今回は四人でやるけどな。本来はもっと人手がいるんだよな。」
「忠実に再現できなくて申し訳ないけど…こちら側の都合だね。」
「そ、そういう裏話は止めようよ!」
そんなこんなで、型枠初心者四人による鉄筋コンクリート造の建築が始まった。
※型枠大工は一人前になるのに10年かかることもある職業です。本来なら初心者四人で一から作り上げるのは難しいことですが、物語のため見逃してください。
三か月後
「で、できた…!」
「そんなに大きくないけどな」
「すごい、しっかり建ってるな」
そうだ。この達成感だ。
だからずっと俺は、型枠大工になりたかった。
「プロの出来栄えとは程遠いけど、俺達が作ったんだよね…」
「うん。大和の教えをもっともっと勉強して、技術を磨けば、この世界もこれから発展していく。」
雷電が満足げに微笑んで言った。
そうだね、この世界も…。
ん…?この世界…。
俺、いつまでここにいるんだ?
この建物を建てるのに三か月かかって…。
ということは、向こうの世界でも三か月経って…。
「どうした、大和」
そんな俺に気付いたのか、鉄骨が肩をポンと叩いた。
「いや、俺…実はここじゃない別の世界から来ててさ…、信じられないかもしれないけど…」
その時初めて、俺は三人に自分の身に起きたことを話した。
きっと信じてもらえないだろう。諦め半分だった。
「ああ、信じるぞ」
「え…」
だけど、返ってきた言葉は意外なものだった。
「お前が帰れる方法、探そうぜ」
足場君が俺の頭をグシャグシャに撫でた。
「型枠の技術、教えてもらったし」
雷電君もゆっくりと頷いた。
「みんな…、ありがとう」
今にも泣いてしまいそうなのを、堪えるのに必死だった。
5話に続く…